第10話「水商売グループの社員旅行」
■勤めてから三ヶ月位だろうか、ビル全館(同じ会社)の社員旅行が開催される事になった。栄次は積立もしていなかったが、Mgが急遽行けなくなり代わりに行く事となった。
総勢60人位のバス二台の団体で一泊二日の熱海旅行である。
その中で知り合いと言えば喫茶の6人と1Fの焼肉店のチーフとサブチーフ位であった。
2Fはスナック3F4Fはクラブ5Fがキャバレーであり6F以上は何が在るかしらない。
次々とバスに乗り込んできた人達は、派手な化粧にケバイ服装の見るからに水商売と
わかるお姉様軍団であった。
バスの中は強い香水と化粧の匂いで充満し、ただでさえもバス酔いしそうな栄次は到着した時はホトホト気持ち悪くなっていた。
旅館に着いて早々チーフ達と待望の露天風呂を浴びて夕方大広間での宴会となった。
栄次の左隣はホールのタカちゃんと言う25才位の女性。
右側はサブチーフが座り前列からその他はズラッーと強烈なお姉様軍団である。
日頃、色っぽい女性もこんだけ集団で勢ぞろいするとかなり怖いものである。
歌えや踊るは上半身肌けるわのドンチャンさわぎである。
栄次はチビチビバス酔いのせいもあって飲んでいると、隣のタカちゃんは手酌で日本酒をグイグイコップでのんでいる。
暫くすると様子がおかしい。おかしいというより完全にラリっている。
「タカちゃん!もう余り飲まない方が良いですよ!」と声を掛けると、
「何!うるせぇ!」と恫喝され、当たらず触らず静観していた時、突然「ウェッー」と
自分の前に吐いてしまったのだ。
周りの人達は「イヤァー汚いな!」と言って誰も助ける様子も気配も無い。
栄次は彼女を抱きかかえトイレに連れて行き介抱した。
会場に戻り、そのままの汚物を片付けて洗面所でタオルを渡し顔を洗うよう勧めて彼女の部屋に連れて行き休ませた。
会場に戻ると、もうお開きになっており夕飯だけが楽しみだった栄次はガックリした。
肩を落として部屋に戻ると、「栄次!ご苦労さん!有難うな!」と言って酒とつまみで
もてなしてくれたのであった。
何のかんの言っても栄次にとっては、先輩達の人の優しさや異様なまでの女の世界を勉強させられた良い旅行であった。
旅行も終わりお店に出勤すると、早番で来ていたタカちゃんが駆け寄って来た。
「いろいろ面倒掛けたみたいでゴメン!全然覚えて無くて」「ところでお前!店引けてからチョット付き合えよ」と、男口調で誘われた。
閉店後待ち合わせると「カウンターバーへ行くぞ!」と言いながら連れて行かれた
タカちゃんはポチャッとした中肉中背のボオイシュなかわいい女性です。
チョット男っぽい口調が難点ではあった。
「この間のお礼だから、何でも好きなもの頼んで良いぞ」栄次は「有難うございます」
と、日頃飲んだ事の無いカクテルを飲む事ができた。
二人共かなり飲んでべろべろ状態の帰り「栄次!泊って行くぞ!来い!」と彼女に
ホテルに連行されてしまったのであった。
その後どうなったか?続きは次回夢心地のkokoroだ!