第4話「大学進学」
■実家が映画館という特殊な環境で育った栄次は、友達から羨ましがられたり変な奴だと後ろ指を刺されたりした事があった。
裕次郎に感化されバケツをドラム代わりに叩いたり、アキラに感化されギター代わりにほうきを持ったり、長目の茶碗にサイコロを入れてダイスの練習をしたり、トランプや花札、麻雀とかなりの影響を受けていた。
そのお蔭でトランプ・花札・麻雀・将棋等は今でも得意分野であった。
そんなこんなで十何倍と言う難関を突破して無事県立の高校に入り、何とか東京のC大学経済学部に入学したのだった。
キャンバスではいろいろな部活の勧誘があり、何の興味も持たずブラブラしていると
ボサボサ頭の年上の先輩らしき学生が声をかけて来た。
「君!ウチに来ないか?」
「えっ!何の部活ですか?」
「辞逹学会と言って弁論部みたいなものだよ」
これと言って何の目的も持たない栄次は、しばらくの間胸の内で考えていた。
男なら自分の思いをしっかり表現できなければ・・・・と。
「興味あります。一度見学させて下さい」と答えてしまった。
結局ズルズルと入部する事となり、毎晩 河岸の淵に10人位の仲間と共に発声練習を行った。
「アイウエオアオ!」「アイウエオアオ!」と、大きな声で絶叫する。
何か月か経った時先輩から〇〇五大学新人弁論大会に出るように言われ、各大学から五名ずつ出る事となり、「神奈川県の汚職問題」を題材として練習に励み発表したのであった。
採点基準は歩き方・姿勢・声量・発表内容・等などであり、栄次が発表していた時会場から「ナンセンス!」大きなヤジが飛んで来た。
先輩からそういう時の対処方法を教わっていた栄次は、ヤジの飛んで来た方向を睨みつけながらより大きな声で話を続けたのが高得点に繋がったのか、何と準優勝の栄冠に輝いてしまった。
一年を経とうとした頃、大学生活に甘んじていた自分に嫌気がさし、無性に将来の事を考え自分にできる仕事を探そうと思い始めていた。一年最後の試験会場で答案用紙が配られ、答案用紙をひっくり返して大学に対する不満や要望を書き出した。
「中退」を考えていた栄次は、一番最初に手を挙げて「できました!」と言って退出した。
アパートに戻り近くの買取店へ行き、リヤカーを借りてベット・布団・本など身の回りの物を入れたバッグ一つを残し、全てを処分したのだった。
連絡をしてあった友達5人と飲み屋で落ち合い、新しい門出に乾杯!と、やったのは良いが、金のない連中だけに栄次が自費で送別会をやる羽目となった。
皆と別れて今度来た最終電車に乗って着いたところで考える事にした。
結局、着いた処が横浜であった。
夜中歩いて到着した所は山下公園。ポケットを探ると三千円と小銭だけであった。
朝方横浜西口をブラブラと歩いていた時、店頭に一枚の張り紙を見つけ「これだ!」
と思った。
その後どうなったかは次回夢心地のkokoroだ!