夢心地「岩田栄次の波乱人生」第11話

第11話「栄次流転の第一歩」

■朝、目が覚めるとそこにはタカちゃんの姿は無く、テーブルの上に一枚のメモ

が置いてあった。

「栄ちゃん!いろいろありがとう、私、昨日でお店辞める事にしたんだよ」

「又、何処かで会おう!いい思い出だったよ」

栄次の二日酔いの頭にも何かジーンとくる結末であった。

何となく、ブラブラしながらそのままお店に出勤していると

毎朝モーニングを注文する1Fの焼肉料理の市村チーフがやって来た。

相変わらずカラーグラスにチョビひげ、耳に赤鉛筆手には競馬新聞の

日常スタイルである。

競馬新聞に集中し、何やら赤鉛筆で印をつけている。栄次がコーヒーのお代わりをもって行くと「おう!栄次!お前に話があるんだ!ちょっと此処に座れ!」

「Mgには話はつけてあるから、急だけど明日から上に来いや」と、言われ

突然過ぎる話に戸惑った。

「お前はなかなか見所があるし根性も座っている。俺も気に入ってるし、これから先

を見てみろ!喫茶のソフトと軽食だけじゃあ駄目だぜ!俺のところで頑張れば、包丁の使い方から朝鮮料理を教えてやるから信じて俺について来い。」

栄次は面倒見てくれた喫茶のMgが好きである。そのMgが納得している事に少し悔しい気持ちがあった。

「チーフ!少し考えさせて下さい」と答えてから、Mgに事情を聴きに事務所に行くと

「言われたか?市さんからどうしてもって頼まれた事なんだが、上も人手不足の事も

あり、それにお前の先の事考えたら料理が出来て、包丁が使えないと一人前にはなれないから、ちょうど良い機会かなと思うよ!仕事・技術は盗むもんだぜ」

「無理にとは言わないし、本当は俺も手放したくは無いんだけどな!」

栄次の為に真剣に考えてくれたMgに目頭が熱くなった。

「将来店持ちたかったら上に行って包丁の勉強するだけでも得だぞ!」

「上に行っても同じ会社だから困ったらいつでも面倒みるからな」

との言葉に一晩考えさせてもらう事にした。

翌朝市村チーフに出した栄次の答えは?と、言う夢心地は来週のkokoroだ!