夢心地「岩田栄次の波乱人生」第9話

第9話「水商売の人生観」

焼肉店のチーフが白衣姿の雪駄履きスタイルで駆け込んできた。

「おい!栄次!とったぞ!1本買い1-8でバッチリ5,2倍1万ちょっとになったぜ!

「お前博才あるで!」と1万円札を手にする事になり、初競馬の初収入であった。

この店に勤務して一ヶ月位経ち、仕事にも慣れて

毎日14時出勤のラスト’迄のシフトになり休日無しのパターンになった。

時間は長いがMgの栄次に対する温かい配慮でもあった。金も無く他にやる事も無く家族もいない自分にとって、遅い昼飯と晩飯迄出してくれて有難い限りであった。

ホールのマリコさんが、本当は心の優しい人だ・・と、言う事が少しづつわかって来た。それは、アレ以来まともに口をきいていないし、冷たい雰囲気であったのだが、

ある時彼女が栄次に久々声を掛けた「栄ちゃん!私の事なんか気にしないでよ」

「何とも思ってないんだから!」と。

栄次は何も答えられずにただ立ったままであった。Mgはなんでも知っていた。

事務所に呼ばれ「俺は人の恋路を邪魔しようと思わないけど一」

「俺が追及したら全部話してくれたよ!お前は純真だから真面目に考えているかも知れないが、彼女はお前より5~6歳年上で完全な遊びなんだから」

「こういう商売やってると昼夜反対でその内だんだん寂しくなって来て、誰でもいいからすがりたくなってくるんだよ。」

「アイツは本当に良い奴でな、お前に言ってくれって!」

「お前をダメにしたくないから自分みたいな年上の女に引っかかるんじゃないよって」

「真面目に考えずアイツの事はほっとけ!」

「アイツは前の男に捨てられて、金をかなりつぎ込んでたんだよ」

「今でも昼夜働いて借金返しているんだよ」

水商売の奥の深さや環境による人生観の違いを勉強させられた時であった。

次回はビル全館の従業員での社員旅行の一幕は来週の夢心地のkokoroだ!