夢心地「岩田栄次の波乱人生」第17話

第17話「ママは女遠山の金さん」

前回、栄次は美人ママさんに後ろから抱き付かれて、かなり、男として危険な状態であったが・・・・気が付いたものの、身動きが取れずじっとしている他なかった。

お昼近く迄そのまま寝ていただろうか?

ママが抱き付いたまま目を覚まして「栄ちゃん!ごめんね。寒かったものだから!」

と、起き上がった。慌てた栄次は「あ!僕は良いです!何にも無い・・・」と、

ドギマギ状態で答えた。

「栄ちゃん!有難う!それじゃあ今晩お店でね!」支度を整えてママは出て行った。

何か気が抜けた空気間であったが、何事も無くママさんが帰り、夜のお店で気を遣う事

も無く働ける自分に満足していた。

それから何日か経った日の事である。

いつものようにカウンターの中で仕事をしていると、二人連れの見るからにヤクザ風

のガラの良くない男達が入って来た。

「いらっしゃいませ!カウンターで宜しいですか?」と、おしぼりを差し出すと

受取りながら、「奥はビンゴやってんのか?ハナ(最初)はいくらだ?」

「最初に5千円両替して頂いてますが・・・」と答えると「じゃあ!二本くれ」と、

言って一万円をカウンターに置いた。注文の水割りを手渡すと、奥の部屋にそそくさと入って行った。

それと折り返しママが奥から早足で出て来て、頬に指をたて

「栄ちゃん!コレだから!言葉だけは気をつけてね!大丈夫!私は慣れているから」

と、言い残し又奥の部屋に入って行った。

その日は奥の部屋に彼等以外に二人、カウンターに常連客が二人いた。

暫くすると、奥で何やら騒々しい。

ママの声がした。「台を動かしたら困るんだよ!」すると、男が「何をっ!」

「もう少し静かに遊んでくれないかね!」とママの声

「こんなインチキ台やってられねえよ!こりゃあ!詐欺だぜバカ野郎!」

すかさずママさんが「お前ら!何処の者だ!○○組に仕切って貰ってるから

チョット来て貰おうか?」と、日頃上品で美人のママからは想像のつかないドスの

効いた怒鳴り声が聞こえて来た。

急に静まり返ったと思ったら、男達は捨て台詞を残して出て行ったのである。

「ママ!大丈夫ですか?」と心配すると、

「ヤクザ怖がっていたらこの商売やってられないよ!」

すかさず、お店のお客様に頭を下げて「皆様申し訳ございません!お騒がせしまして

コレはお店からのおごりですので飲んで下さい!」と言って栄次にビールを出させた。

流石である。常連のお客様に即対応するママの姿勢に感服したのであった。

ママの心くばりはソレだけじゃあ無い。

ゲームで負けたお客様に無料ドリンクを出したり、スッテンテンの人には帰りがけに

千円握らせて「今度頑張ってね!待っているから」と、甘くささやくのである。

殆どの常連さんが引っかかって又やって来る。

つくずく男って奴は女に弱くてバカな動物であると思った。

帰りがけに栄次にも二千円握らせて「嫌な思いさせたね!」と言った。

 

何日かして久々にチーフが店にやって来た。

「栄次!やっと目途がついたぞ!」チーフの言葉!

さて、この後栄次はどうなる?