第19話「新天地 和歌山の巻その1」
横浜馬車道のアパートを後にして、チーフと待ち合わせをして一路和歌山に向かった。
勿論、栄次は初めての和歌山であった。
和歌山駅を降りて目的地に着いた。・・・が、
来る途中チーフに聞いていた処に、話していた建物も店も無く工事らしき事もやっておらず何にもないのだ。
チーフの話によると、貸店舗を借りて改装し焼肉店をやる事になっており、今改装中の
ハズであるわけなのだがその兆候はまるで無い。以前飲み屋だっただろう建物は古びて
窓ガラスが殆ど割れて誰も住んで居る様子が無い。完全なあばら家であった。
近くの公衆電話からチーフが誰かに電話している。BOXから出て来た途端「クソッ!」
と、大きな声で怒鳴り散らした。
雰囲気からして栄次はヤバイと感じた。チーフは状況の説明も何もせずに
「今日はビジネス取ってあるからそこに行け!」と言われ駅近くのホテルへ一足早く行く事にした。しばらくしてチーフが戻りコップの水を一気に飲み干すや否や話し出した。「栄次!当分ダメだ!お前しばらくの間、段取りつけるから黒門町の店で働いていろ」何も言えず黙っていると、「大丈夫!必ずやるから!」
「黒門町で俺のダチがパーラーの店やっているから話つけてくるから・・いいな?」
怒涛の如く一方的には話をして又出かけて行った。
結果、何と翌日から黒門町のメイン通りにあるヒスイと言うカフェと言うか喫茶店に
住み込みで行く事になりそうである。
朝一番で教えてもらった通りの真ん中あたりにあるお店を訪ねマネージャーらしき人に
チーフから教わった口上を話すと、角刈りの多少ヤクザ風の彼が「おう!聞いてるぞ!」「市ちゃんから頼まれているから。」と言い、近くにいた店の若い女の子を呼んで「おい!みっちゃん!悪いけどコイツさ今度ウチでやる事になったから店の前の二階
の下宿部屋に案内してやってくれ。」「ところで名前何てんだ!」
「岩田栄次です!」と答えると、彼女に案内してもらいながら何となくタコ部屋にでも連れて行かれるような気分であった。
この後栄次はどうなる・・・と言うお話は次回夢心地のkokoroだ!