題22話「彼氏は暴走族」
■和歌山での新生活にも慣れてきて、朝6時から夕方までビッシリ働き
その代わり三食付の週1日休み、家賃タダの条件であった。
知り合いも無くお金も使う事の無い日々だった。
お店のみっちゃんは栄次にとても好意的で、チョイチョイアパートに出入りして
お店でもカウンターに向かってオーダーを読み上げる時も、栄次にニコッと笑み
を浮かべるのである。
どうやら彼女は栄次に好意を持っていた。
栄次も以心伝心でそれを感じていた。しかし、お店の決まりで従業員同士の付き合いはご法度であり、お店の中では言葉でも態度でも控えなければならない雰囲気であった。
夕方遅番のバイトが来るまで仕事をして、晩飯は週に2~3回はお店で作る特製のカレーであったが、三食付と言うのはとても有難い事であった。
遅番と交代し翌週シフトをもらって部屋に帰る。
暗くひっそりとしたラジオもテレビも無い部屋で窓を開けると、屋根越しに名前も知らない高い山が遠目に見えた。
「俺は何でこんな処にいるのか?こんな事やってて良いのか?」などと考えるようになり、暇な時間があればあるほど消極的な気持ちになっていった。
誰かが階段を上って来る音がする。
みっちゃんが又差し入れを持って来てくれた。二日に一回のペースである。
和歌山に来て友達も知り合いもいない栄次にとって彼女の存在はとても大きく日に日に親近感が増して来るのだった。
彼女は部屋に上がり込んで自分の話をし始めた。
彼女は高校を中退し田舎を跳び出して、それに、暴走族でかなり慣らしたのだという。
話を聞いてさらにビックリしたのは、ここら辺界隈走っている暴走族グループのヘッドが彼氏で、今現在付き合っているのだという。
彼氏がいながら彼女の行動は軽く異常であり、頼んだ訳でも無いのに何回も差し入れしてくれたり、優しくしてくれたりかなり軽率なんだと思った。
暴走族の話を得意気に話して「今度!乗せてあげようか?」の問いに首を横に振る栄次であった。
帰りがけに「今度来るときポケットラジオ持って来てやるよ。」と、言って出て行った。
一人畳に仰向けダイノジに寝ながら、横浜時代のマネージャーやママの事を思い起こしていた。
栄次はこれからどうなるのか?チーフのあたし居お店はできるのか?
・・・・・と言うお話は来週の夢心地のkokoroだ!