第15話「名誉の負傷」
初めてセンマイの調理を任された栄次は、全てのヒダを洗い終わったものの
水切り作業をしようと左手でそのセンマイを持ち、右手に持った小刀で太い柱に
刺そうとした・・・その時水分を含んだセンマイが重く1cm位下にずれた瞬間
左手の親指の第一関節の上あたりに刺してしまい、自分の顔に血しぶきが飛び散って
当たり一面血だらけになってしまった。
「いてっ!」悲鳴をあげて指を押さえる栄次に、「バカ野郎!何やってんだ!」
「すぐ消毒薬と脱脂綿もってこい」と健さんに言いつけて、輪ゴムで二十三十に
指に巻き付け血止めをしてくれた。
手際良く消毒してから「病院へ行って来い」と言われ、チクチク痛む指をおさえながら
病院に駆け込んだ。
医者に診てもらうと痛いはずである。親指の頭が取れそうな状態ではないか。
見れば見るほど痛みが増してきた。
何の仕事でも失敗はつきものであるが、余りにも痛い失敗であった。
こういう事を乗り越えながらみな成長していくんだ!なんて解ったような事を
自分に言い聞かせる栄次であった。
しばらく経って指の痛みも引けた頃、思いがけない事件が起こった。
・・・・と言うお話は次回の夢心地のkokoroだ!